手順を覚えれば出来る編曲やり方と考え方について
【作曲と編曲の違い】
工程 | 内容 | 具体例 |
作曲 | 曲を作る行為全体を表す | 主旋律・ギタートラック・ピアノトラック等、音符を組み合わせる行為全て |
編曲 | 曲を豪華・洗練するための肉付け作業 | ベース・伴奏・リズム・リフ等、曲全体のイメージを編集する作業全て |
作曲と編曲の違いはよく料理に例えられます。
例えばチャーハン(炒飯)を作るとして、味付け・具材は色々な選択肢がありますよね
作曲するとは「料理」を作ることであり、編曲するとは味付け・盛り付けを行うようなものなのです。
その際に必要な知識として
例 | 編曲の場合 |
作りたいジャンルによる素材の選び方 | ジャンルによる楽器の選択 |
それぞれの材料の調理方法 | 楽器ごとの演奏方法 |
各材料の配分 | 楽器ごとの音量・定位のバランス |
味付け方法 | 楽器ごとの音作り |
が必要になってきます。
逆にいうと、新しい料理を考えるわけではなく、既存のものをアレンジするのが主なので、各楽器隊の知識があればある程度編曲が出来るのです。
今回はそんな編曲に役立つ楽器隊の知識と編曲の考え方をご紹介したいと思います。
編曲を行う為の効率的な3ステップ
【超重要】
まず編曲を行う前には必ず下記の3点をしっかり決めましょう
順番 | 決めること | 具体例 |
1 | 曲のジャンル・方向性 | ロック・ボサノバ・JAZZ等大きい枠組みは必須事項。
出来れば具体的な目標となる曲名があるとGOOD! ロックでもパンクロックとバラードロックでは編曲の方向性がまるで違います |
2 | 楽器の選出と音色 | エレキギターでも、ひずませる量・リバーブの深さ・その他エフェクトによって全く別の音になります。
この時点でしっかりと使いたい音のイメージを付けておきましょう。 |
3 | 各楽器の演奏方法 | Aメロはこんな感じ~ Bメロは少し落ち着いて~ 1サビと2サビで盛り上がりは変えて~等 |
【超重要項目】曲のジャンル・方向性を決める
1番の
「曲のジャンル・方向性」を決めておくに関しては、妥協しないほうが絶対いいです。
作り出す時点で、完成系のイメージを細かく説明できるようになるまで頭で作りこみましょう
むしろ目指したい曲(リファレンストラックと言います)を、8割ぐらいパクる気持ちで挑みましょう!
(初めのうちは真似しようと思っても、その通り真似できないので似すぎた作品にはできません(笑))
ここで2-3日かけるくらいの気持ちが良いと思いますよ!
この作業、根性論の様に聞こえますが、実はとっても大切なことです。
音楽は感覚の世界の様にとらえる人もいますが、私は数学的であり、設計に近いものだと思っています。
編曲を行うことは「料理」を作ることと似ていると説明しました。
皆さん、
「今日の晩御飯は料理を作ってください」
と言われたら、まず何を考えますか?
メニューを考えますよね?
(チャーハン・鍋・ステーキ・お寿司・・・)
それが決まると次第に、○○風にしようという考えが出来るようになります。
するとこまかい味付け(濃いめ・薄め・辛さ等)が決められます。
音楽も料理も
「まず何を作るか?それをどんな味付けにしていくか?」
が決まらないと、筋の通ったものにはならないのです。
キムチ入りのケーキがおいしくなると思いますか?
ホワイトシチューに納豆を入れて好まれる味付けになるでしょうか?
編曲については、まず第一に完成系のゴールをしっかり見定めてから始めましょう。
楽器の選出と音色(楽器ごとの周波数特性を知ろう)
さて、作りたい曲はしっかり頭にイメージできたでしょうか?
お次の工程は楽器の選出と音色のイメージです。
楽器の選出についてですが、まず大切なのが
「なぜその楽器を入れるか?」
になります。
編曲のコツは何といっても、曲全体の周波数バランスが大切になってきます。
逆にいうと、どんなに演奏が上手だとしても、曲中の周波数バランスが整っていないと物足りない曲になってしまいます。
下記をご覧ください。
理想的な曲中の周波数バランスは、上記の様に中低域~中域の境目をトップにして、なだらかに下降する分布が良いとされています。
そうすると、次第に「どこの帯域はなんの楽器で担当しようか?」という、設計のような考えが出来るようになります。
ちなみにざっくりとした図ですが、よく扱われる楽器別の簡単な周波数分布です。
見てもらうと分かると思いますが、中域はいろんな楽器が担当できますね。
それに比べて低域や中高域に関しては、ある程度楽器を選ばないとその周波数の音が出せません。
分布をみると中低域~中域が最も波形が大きいので、しっかりしたベースパートの土台が必要というのがわかります。
(これはあくまで周波数の話です。人の耳は低音を感じ取りにくいので、聴感上は中域より上がよく聞こえています)
また厳密には音には倍音というものがあるのでどの楽器でもそれなりに音は出ています。
ここではその楽器らしい音の周波数にフォーカスを当ててみました。
楽器の音はいろんな周波数帯が合わさって音になっている
ピアノに関しては全て音階ですので、低い音と高い音の区別でいいのですが、他の楽器はそうはいきません。
例えばギターなら
- ブリッジ付近の「ブッ!」といった中低域の周波数
- 和音を感じる中域の周波数
- 音の伸びや響きを感じる中高域の周波数(倍音成分の部分ですね)
といった感じに、ざっくり分けると3つの周波数が混ざり合ってギターの音になっています。
実際に音を聞いてみましょう。
【原音】
【低域】(ライブハウスから漏れ出るような音です)
【中域】(ギターの音程やコード感が感じ取れる音楽的な部分です)
【高域】(音の抜けと呼ばれる部分です。ここが弱いと音がこもって聞こえます)
いかがでしょうか?
もしかしたら普段意識したことが無かった部分かもしれませんね。
編曲を行う際は、楽器ごとの普段意識していない音のキャラクターを理解する必要があります。
各楽器の演奏方法と組み合わせを知ろう
曲の方向性が決まり、使用する楽器も選出できた。
そうしたらいよいよ、楽器ごとの演奏する組み合わせを決めていきましょう。
曲全体の盛り上がりを具体的な数字にして設計しておく
奏法の決定前に曲全体の盛り上がりをイメージして数値化してみましょう
ドラマチックな曲なら、
- イントロはピアノのみでしっとり
- Aメロは音数の少ないピアノと全音符を主体としたギター
- Bメロでベースとドラム・2ギターが参入し、リフも発生し始める
- サビは4つ打ちのキックとオープンハイハット。ギターは2本ともコードをかき鳴らす!
みたいなイメージを図にしてみます。
この設計図が出来上がれば、あとは自然とそれぞれの楽器の奏法や、密度が決まってくるはずです。
代表的な楽器ごとの奏法について
こちらは紹介すると楽器ごとによって、膨大な量になってしまいますね。
しかし共通して考えなきゃいけないことは
「音数の密度」
です。
初心者の方が陥ってしまうことの一つに、音の詰め込みすぎが上がります。
昨今YouTubeとかで、「弾いてみた」等の動画を見ると超絶技巧でプレイしていたりします。
しかしあれは、音数が圧倒的に少ない(他の楽器隊が目立たない)から成り立つものです。
実際のバンドアンサンブルで、みんなが終始盛りだくさんの演奏を行っていたらバンドが崩壊します。
ですので、奏法については
- 白玉(全音符)を積極的につかう
- アルペジオを取り入れる(ブレイクタイムでも盛り上がりでも使える万能奏法です)
- キメどころはなるべくみんなしっかり合わせる。
を意識してみてください。