まるでAIのような機能、ロジカルエディター
ロジカルエディターとはどんな機能なのか?
ロジカルエディターとは、簡単に言うと
「MIDIデータを自動で一括編集してくれる機能」
です。(慣れてくると超絶便利な機能です)
例えば、小節頭のキックのみ選択し、まとめて編集することが出来る機能です。
【例】こちらのドラムデータから、小節頭のキックのみ選択する場合は
下記のようなフィルターを自分で作成してあげると、ワンクリックで全て選択してくれます。
【フィルター内容説明】
- 第1条件_C1ノートに等しいかつ
- 第2条件_小節頭の部分のみ
- 実行機能_選択のみ
これは現在選択しているMIDIデータのみが検索・摘出対象となります。
逆に裏拍のキックのみ自動で選択して、音量・タイミングを調整したりすることもできます。
ロジカルエディター画面の見方
ロジカルエディターの画面をざっくり説明すると
- 上半分が「検索条件」設定エリア
- 下半分が「実行内容」設定エリア
- 検索・実行についての条件設定項目が「大区分・中区分・詳細」で分かれてる
- 条件のつなぎ方(AndかOr)を設定
- 適用ボタンを押した際の機能の選択
みたいな構成になっています。
この画面はすぐに見慣れるのですが、問題は各項目の条件設定がユーザーにとってわかりにくい設計になっています。
例えば大区分で選べる「値1」という項目があるのですが、こちらはタイプで選んだ条件についての設定項目になっています。
(キックが入力されている「C1」のみ選びたい時は、まずタイプで「ノート」を選択し、値1を追加すると「ピッチ」となるのでC1を追記します。)
もしもタイプで「コントローラー」を選ぶと、値1は「MIDIコントロール番号」に変化します。
このように、自分が使いたい検索種類は、なんという名前で登録されているのか知らないと使えません。
(便利な機能なのに、なんでこんな使いにくいパラメーター名になっているか不思議です)
この項目名については後ほど詳しく説明していきます。
ロジカルエディターで出来ることの一例
ロジカルエディターは様々なフィルター、実行機能を自分で設定するので出来ることは多岐にわたります。
そんな中でも、普段の作業で役立つような使い方を紹介していきます。
機能 | どんな時に使えるか |
指定拍のみ選択 | ある一定のグルーブ感を与えたい時に使えます。 |
指定ノート(C0とかD#1とか) | ドラムトラックの一括調整に使えます。その他ミストーンの検出にも使えます。 |
指定拍+タイミングの微調整(ランダムで±数ms移動) | タイミング微調整に使えます。人間らしさを出すためにわざとずらすときにはもってこいです。 |
一定の音量以下・以上のノート選択 | 手で弾いたときに、強すぎた・弱すぎたノートを一括で編集することが出来ます。 |
全てを指定長さの音符に変換 | ドラム打ち込み等で、MIDIデータを見やすくする |
ベロシティのヒューマナイズ(超おすすめ) | ベロシティにランダムで大小の差をつけて、あたかも人が演奏したかのようなニュアンスを付ける |
後ほどロジカルエディターの細かい設定方法をご説明しますが、先に超おすすめの「ベロシティヒューマナイズ」について、実例をご紹介します。
ピアノに限らず全ての楽器に当てはまることですが、人間が演奏を行った際に全て(タイミング・ベロシティ等)が一本調子になることはあり得ません。
つまりリアルな演奏感を求めるならば、上記(タイミング・ベロシティ等)の細かい調整が必要になってきます。
実際に演奏できるならば、それをそのまま録音すれば済む話なのですが、実際にはなかなか全ての楽器を演奏出来ないのが現状でしょう。
そこで少しでも楽にヒューマナイズするために、ロジカルエディターを使います。
ベロシティのヒューマナイズ
実際にヒューマナイズを行った違いをお聞きください。
【ヒューマナイズ前(ベロシティ100で固定】
【ヒューマナイズ後(ベロシティランダム】
上記のような細かい編集が一瞬で出来るのが、ロジカルエディターの魅力の一つです。
ちなみに設定項目は下記の様になっています。
【フィルター内容説明】
- 第1条件_ノートのみ対象
- 実行機能_値2(ベロシティを意味します)を-8~+10ランダムで増減
ここから更に応用技として、裏拍にアクセントが来るように調整してみました。
設定項目はこちらです。
【フィルター内容説明】
- 第1条件_ノートのみ対象かつ
- 第2条件_1小節を16分で譜割りした際の5分目と
- 第3条件_1小節を16分で譜割りした際の13分目
- 実行機能_値2(ベロシティを意味します)を95~115のランダム値に変換
といった感じです。
設定項目のパラメーター名称説明
ロジカルエディターではパラメーターの名前が不親切なので、まずはここをリスト化しておきます。
大区分パラメーター(フィルター対象)
パラメーター名称 | 実際の内容 |
ポジション | 位置を対象とします。曲全体のどことか、小節内のどこら辺とか指定できます。 |
長さ | MIDIノートの長さを対象として扱います。 |
値1 | タイプで選んだ項目に依存します。ピッチやベロシティが反映される項目です。 |
値2 | タイプで選んだ項目に依存します。ピッチやベロシティが反映される項目です。 |
チャンネル | 通常あまり使用しません。詳しくは本家で見てみてください。 |
タイプ | MIDIノートや、ピッチベンド、CC等を選ぶことが出来ます。通常は「ノート」を使うことが大半だと思います。 |
プロパティー | ミュートイベントとかを選べます。あんまり使わないです。 |
値3 | タイプで選んだ項目に依存しますが、ほとんど使わない気がします。 |
最近のイベント | 文字通りなのかもしれませんが、謎です。使う機会あまりないと思います。 |
Context Variable | ピッチ・ベロシティ・CCの最大値・最小値・平均値等をもとに検索をかけることが出来ます。
またコードの構成音について検索できます(m3とかルートノートとか) |
うーん・・・・複雑ですね・・・・。
タイプ別の値1・値2の項目内容
パラメーター名称 | 値1 | 値2 |
ノート | ピッチ(C-2~G8) | ベロシティー(0~127) |
ポリプレッシャー | 押さえられるキー | キーに対して加えられたプレッシャー量 |
コントローラー | MIDIコントロール番号 | MIDIコントロールチェンジの値 |
プログラムチェンジ | プログラムチェンジナンバー | 使用しません。 |
アフタータッチ | キー全体に対して加えられたプレッシャー量 (私も意味わかりません) |
使用しません。 |
ピッチベンド | ピッチベンドのファインチューン?とのこと。よくわかりません。 | ピッチの変化量(0~127)。63を正ピッチとし、127で全音上。0で全音下になります。 |
SysEx | 不明。多分使うことないと思います。 | 不明。多分使うことないと思います。 |
SMFイベント | 不明。多分使うことないと思います。 | 不明。多分使うことないと思います。 |
VST3 イベント | 使用しません。 | 公式読んだが不明。多分使うことないと思います。 |
一応公式説明リンク貼っておきます。
「値 1 (Value 1)」と「値 2 (Value 2)」 (steinberg.help)
ロジカルエディターを実行した際の挙動実例
ロジカルエディターの適用方法としては、大きく分けて3種類の使い方があります。
- 自分で選んだMIDIデータのみ、変化を加える方法
※この場合、画面上部の「フィルターを用いた検索機能」は使用しません。 - MIDIデータをフィルターを用いて、選択する
- 検索・適用まで全てロジカルエディター上で行う
なんだかんだで使う頻度が多いのは、1と2の方法です。
1.自分でMIDIを選択し、変化を加える
2.MIDIデータをフィルターを用いて、選択する
ロジカルエディターを使う際のコツ
上記までの説明で、大体ロジカルエディターが使えるはずです。
実行項目は結果がわかりやすいので、イメージ付くのですが、慣れが必要なのは検索項目だと思います。
フィルターを作成する際は頭の中で
- 第1条件が○○なのは絶対譲れない!(接続詞はAnd)
- 第2条件としては○○か(接続詞はOr)
- 第3条件として○○が含まれること
の様に、日本語で丁寧に文章を作っていくことが大切です。
※エクセルのフィルター検索機能に似ていますね。
是非使いこなして時短を目指しましょう!